こころ 先生と遺書 夏目漱石 つづき
友だちのKのことでしたね
誰の助けも借りずにがんばってみると言い出したんですね
彼はだんだんセンチメンタルになっていきます。時によると、自分だけが世の中の不幸を一人でしょって立っているようなことを言います。そうしてそれを打ち消せばすぐ激するのです。それから自分の未来に横たわる光明が、次第に彼の目を遠のいてゆくようにも思って、いらいらするのです。学問をやりはじめた時には、だれしも偉大な抱負をもって新しい旅にのぼるのが常ですが、一年とたち二年と過ぎ、もう卒業も間近になると、急に自分の足の運びののろいのに気がついて、過半はそこで失望するのがあたりまえになっていますから
あっ これは小説でしたね
自分のことのように思って読んでいました
Kはこのことにはなはだしかったのですね。
苦労をしょってでも、一人でやってみようとするのは けっこう大変な事なんですけれども
Kはただ学問が自分の目的ではないと主張するのです
そのうえ窮屈な境遇にいる彼の意志は、ちっとも強くなっていないのです
「私」はとうとうKといっしょに住んで、いっしょに向上の道をたどっていきたいとまで
思うようになるのです
おひとよし!