こころ 先生と遺書 夏目漱石 つづき
ー私は小石川へ移ってからも、当分この緊張した気分にくつろぎを与えることができませんでした。私は自分が恥ずかしいほど、きょときょと周囲を見回していました。不思議にもよく働くのは頭と目だけで、口のほうはそれと反対に、だんだん動かなくなってきました。私の家のものの様子を猫のようによく観察しながら、黙って机の前にすわっていました。私は油断のない注意を彼らの上に注いでいたのです。おれはものを盗まない巾着切りみたようなものだ、私はこう考えて、自分がいやになることさえあったのです。
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なんて うまい表現なんだろうと でも猫は人のことをそんなに観察するのかしら。
ものを盗まない巾着切り(きんちゃくきり)しっかりと意味はわからないけど 笑いました。
私はただ一言つけ足しておきましょう。私は金に対して人類を疑ったけれども、愛に対しては、まだ人類を疑わなかったのです。だからひとから見ると変なものでも、また自分で考えてみて、矛盾したものでも、私の胸の中では平気で両立していたのです。
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このページはいい事が書いてありますね。矛盾した事が両立する なるほどね。
奥さんの事でも 他人は相手のことをてんでわかっちゃいないこととか どうやって相手のことを推しはかるのかってことを よくありそうなはかりかただと 面白いです。
この小説は 読んでいくうちに 世間一般の事だとか 人の事だとか 面白いものだし 身近なものだとわかってくるんです。