「こころ」 夏目漱石 先生と私 つづき
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「先生は癇性(かんしょう)ですね」とかって奥さんに告げた時、奥さんは「でも着物などは、それほど気にしないようですよ」と答えたことがあった。それをそばで聞いていた先生は「ほんとうをいうと、私は精神的に癇性なんです。それでしじゅう苦しいんです。考えると実にばかばかしい性分だ」と言って笑った。精神的に癇性という意味は、俗にいう神経質という意味か、または倫理的に潔癖だという意味か、私にはわからなかった。奥さんにもよく通じないらしかった。
その晩私は先生と向かい合わせに、例の白い卓布の前にすわった。奥さんは二人を左右に置いて、ひとり庭の方を正面にして席を占めた。
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今日は「癇性」という言葉ですね
「癇性やみ」ということばは 私は何度か耳にしたことがあります
「神経質」というとそれよりちょっと上 「潔癖」というと手を洗えと
言う人(笑い)いずれにしても その人にくっついているものですよね