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こころ 夏目漱石

「こころ」夏目漱石 先生と私 つづき

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 雑司が谷にあるあるだれだかわからない人の墓、ーこれも私の記憶に時々動いた。私はそれが先生と深い縁故のある墓だということを知っていた。先生の生活に近づきつつありながら、近づくことのできない私は、先生の頭のなかにある命の断片として、その墓を私の頭の中にも受け入れた。けれども私にとってその墓はまったく死んだものであった。二人のあいだにある生命の扉をあける鍵にはならなかった。むしろ二人のあいだに立って、自由の往来を妨げる魔物のようであった。
 そうこうしているうちに、私はまた奥さんとさし向いで話をしなければならない時機が来た。そのころは日の詰まってゆくせわしない秋に、だれも注意をひかれる肌寒(はださむ)の季節であった。先生の付近で盗難にかかったものが三、四日続いて出た。盗難はいずれも宵の口であった。大したものを持ってゆかれた家はほとんどなかったけれども、はいられた所では必ず何か取られた。奥さんは気味を悪くした。そこへ先生がある晩家を空けなければならない事情ができてきた。先生と同郷の友人で地方の病院に奉職しているものが上京したため、先生はほかの二、三名とともに、ある所でその友人に飯を食わせなければならなくなった。先生はわけを話して、私に帰ってくるあいだまでの留守番を頼んだ。私はすぐ引き受けた。


「自由の往来を妨げる魔物のようであった」
謎をおって行くのが さすが文学で(ちがうか)ゆっくりとしているところが
いいなあ などと。
盗難が近辺であるということが 事情で それをたすと 50%(ちゃうか)
この人はたいがいのことを ひきうけますね
先生はもちろんのこと 墓のなぞ 先生の奥さん 事情 そういうことが 出ては
ひいていき それでも その波は 近づこうとしているようなんですね


《 2019.01.27 Sun  _  読書の時間 》