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ぺんき

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どんな人がつくったものでも とくに 父の作ったものは
もちあげて 「作品」と言わせてもらおうかな

さて その父の作品の中に 食器戸棚があります
まいにち お皿を入れたりだしたりするので みんなで生活している時は
そのことについて 考えることとか感動するなんてことはありませんでしたね
それに 父の作品は もちはこびができません
そこにしつらえられたものという感じかな
 というわけで この食器戸棚に そこで一生をおくるように命令したのです 
食器戸棚も まあそんなもんだろうということで そこでくらしました
 家も 人間のように 年を取ります
父も 命令しっ放しではありましたが ある日 死んでしまいました

故郷には 本当にだれもいないのです
ほうちょうで ねぎなんかをとんとんとんって 丁寧に切る母もいません
同じとんとんとんでも 父のあのカナズチの音も うるさかったですけれども 聞こえてはきません
家具たちも みいんな 命令されたとおり 古い家にじっとしています
雨漏りのする 床のぬけはじめた家に入ると 生きていることがうそのようです
なんだか この古い家の中が 「ホントのこと」に 感じてしまったりするのです

 ここには 父がいて 母がいて 自分の頭の中にいる2人のほうが鮮明で
やがて私が死ぬまで ここであった暮らしを持ちつづけているように
命令されているみたいです

こういうわけで 私には 未知の死というものがありません
なんちゃって こうして書いていくうちに その気になってきましたよ
そうなりますと いっしゅん 立ちつくして いまを忘れます

はっと 気がついて 話は変わりますが 戦後 父は いろんな家具やこの食器戸棚にも ぺんきをぬりました
いまの私からすれば 日本のレトロな味わい深い家具に ペンキをぬるなんて もったいないとも思いました
ところが このぺんきでさえ レトロになりつつあります
水色 ベージュ ピンク 
ちょっと薄暗かった 当時 祖父の代からの家は
明るくすることに 考えが移ったのかも

この話を書いたのは まだ実家が あったころです
今は もうありません

テレビで 一人暮らしをする老人の姿を見るとき 私は つい
その老人の周りにある家具なんかにも目がいってしまいますね
紛争で がれきの山の中に じゅうたんや 食器を見ると
そこに 生活の跡があるなあとか イギリスのすきまがないような家
昔からとりこわすことなく 別の人が入っては生活しているのは
えらいなあと思ったり
お客さん どうしていますか

絵?へたですけど この戸棚は工夫されていましたよ
戸棚の下は 大きな引き出しのようになっていて 墨が入れてあったんです
前にも言いましたかねえ のりぞー

 
 

《 2018.11.29 Thu  _  思い出 》