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日記1985年

日記1985年 つづき

「こんなところに 店出して ようやっていかんわ ゆうたら
主人がね おまえやったら何処へ行っても 人を集められるやっちゃ
いうねん。
そうしたらね 店をはじめて しばらくすると 星田のSさんちゃうのん
という人が チラホラでてきてねえ。わたしは人の縁を大事にするねん。
えんがわっていう名前もね 別になんの気はなしにつけてん。そやけど
"奥の間"とつけんと えんがわとつけてよかったなあ と 今となったら
思う。奥の間と最初からつけたら 人は入りにくいやん。
いつかは奥の間に到達するような物を作らないかんと思うけど そうしつつ
も えんがわのことを 忘れたらいかん。
わたしはどんなふうになっても、タンポポをみる気持を 忘れたらいかんと
思てる。わたし タンポポが大好きやねん.....」

話は よこによこにすすんで えんえんと続く。
それでも一つ一つの話の中に あついものがあって わたしはじっと
聞いていた。
「息子はね せっかくお母さんがはじめた仕事やもん あとをつぐよと
いってくれてるよ。
めしだけ食わせて なんもいわんと育てた子やけど 子にはあんまり手をかけたら
いかんねん。めしだけ食わしとったら 勝手に育つねん。ここだけの話やけどな。
今日で おしまいだという 藍まつり 藍染めで作った作品を集めたのを
この2階の部屋で見せてもらった。

藍染めというのは むかしから野良着に使われていたという。なぜかというと
この染料は虫をよせつけない。 たとえば むかでやへびが いやがるらしい。
その上 暑いときでも解熱作用があるので 汗を吸い取ってくれるらしい。
これはAさんに教えてもらった。

「藍は 品がないという人もおるけど わたしはそうは思わん」
Sさんはそういった。
わたしはお金がないから知恵がわいてくるのだともいった。
藍をつかって デザインをし クッションや玄関マット 壁掛けなどを
なにげないところからつくっていって 人に買いたいと言わせたかを
熱っぽく語ってくれた。

藍のことを教えてくれたAさん夫婦にその店を紹介すると さっそく行ったという。
「よくしゃべるひとねえ。のりこさんを大柄にしたような エネルギッシュな...
まあでも わたしきらわれちゃったみたいよ。
 わたしのことAB型とちがいますかっていうの。なんでも AB型の人は
きらいなんですって」
わーこれはたまらない。でも Sさんは実はB型なのだ。どっちにしても血液型でSさんは
きらわれてしまったというのだ。

ここら辺辺りから わたしは困ってしまって 少しおさえるというか 
たしかに Sさんはおしゃべりで 聞き役だけだと自分も疲れるよなあと。
わたしは ここで むかしの友達を 思い出していた。仕事場の寮で
夜中まで 恋愛成功話を聞かせつづけた 彼女の事を。
2人とも 話はとてもうまい。いいこともいっぱいいう。
でもずっとだと きっと疲れてしまう。

Sさんはおしゃべりなのか
気付くのが遅いのだ

おてだま Sさんに教えてもらったのを つくってみよう。
子供のころから どうしてもできないのだ。
おしまい


わたしは なんどか この店に行って 長い話を聞かせてもらいました。
それは自分にとっては なかなかよかったのです。なぜかというと
お店を やって行く人は こんな人なんだなと わかったということ。
ほかにも お店をやっていけそうな人は いるでしょうけれども
自分は そのときやっていた 絵を描く事を やっていこうと
思いました。自分には むいていると思ったからです。
よく いいお店に入ると こういうことやってみたいなあ などと
思ったりしていましたが やっぱり むいていないでしょう。
Sさんは そこを 気付かせてくれたわけで よかったのです。
話も 面白かったから よくおぼえています。
Aさんご夫婦には 申し訳なかったと思います。 そんなに血液型に
こだわってたんや
Sさん
お店 33年前のはなし。つづいてるかなあ





《 2018.09.14 Fri  _  日記(日々) 》