who am ?I

PAGE TOP

  • 05
  • 23

アフガニスタンでの一日

スキャン3592.jpeg

それは「アフガニスタンでの一日」の話
知り合いの Oさんが話してくれた
ホテルの中庭の 芝生の上で Oさんは緑茶をのんでいた
60年間この国は 戦火の中にあるというが(これは何年か前に
聞いた話なのでふえている)まだその頃は 今ほど激しくはなかったのだろうか

中庭からは まっ青な粉塵を散りばめたような空が 見えたという
若い時のOさんだから 家族もなく 一日お茶を飲んでそこにいても
さして違和感も感じなかったのだそうだ
アフガニスタンという 遠い異国の地で その国の空気をすい
珍しい時を すごしたというわけなのだ

その庭には 一羽のペリカンがかわれていたという
飛べないように 羽を切られたペリカンで ペリカンは なんでも
のみこんでしまうらしかった
そのとき 自分はペリカンのことを ペンギンとまちがえていて
たしか「ペンギンは元々飛ばなかったんじゃなかったの?」と不思議だった
それでも なんでものみこむというシーンだけ 想像していたから
うなずいていた

旅行者たちはその珍しい鳥をよこめに 日がな 芝生でくつろぎ
お茶がなくなれば チャイや紅茶を おかわりしたりしていたんだという

ところが そのペリカンが やっちまったのだ
客のパスポートを のみこんでしまった
大さわぎになった
旅行者は パスポートを飲み込まれないうちに なんとかして
とりかえさなければならなかった
わたしは その姿を想像しながら 笑った

考えた 「自分は 一日ベッドに寝転んで 手持ち鏡をながめてた
十代の頃以来 一日ぼーっとしてすごすことって あったかなあ
なかなか そういう気持ちになれないのが 大人というものか
いやいや そういう大人も いるはず」
このOさんの話を聞いていて 思ったことだった

Oさんのひげは よく似合っていた 
アフガニスタンではひげでもはやしていないと
大人には見られないということだった
この のんびりした人のいる国を 
そっとしておくことはできなかったのか
のんびりできるのは 金持ちだけだったのか

木陰で ヒゲの男たちがくつろぐ Oさんの写真を 
あつかましくも 自分の絵と交換してもらった
とてもいい写真だと アトリエで見る度に思う

わたしは この日記が いつ頃のものか 
Oさんとは いったいだれなのか 書きうつしているうちに
やっと 思い出した

上の写真は「遥かな国」というタイトルを付けている
自分の紙粘土作品の のっていたころのもの
アフガニスタンをつなげてみたつもりなんだけど


 




《 2018.05.23 Wed  _  思い出 》