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「夢」茨木のり子 ー『歳月』所収 ダ・ヴィンチ12 メディアファクトリー 
2008

ふわりとした重み
からだのあちらこちらに
刻されるあなたのしるし
ゆっくりと
新婚の日々よりも焦らずに
おだやかに
執拗に
わたしの全身を浸してくる
この世ならぬ充足感
のびのびとからだをひらいて
受け入れて
じぶんの声にふと目覚める

隣のベットはからっぽなのに
あなたの気配はあまねく満ちて
音楽のようなものさえ鳴りいだす

余韻
夢ともうつつつともしれず
からだに残ったものは
哀しいまでの清らかさ

やおら身を起こし
数えれば 四十九日が明日という夜
あなたらしい挨拶でした
千万の思いをこめて
無言で
どうして受けとめずにいられましょう
愛されていることを
これが別れなのか
始まりなのかも
わからずに

  『歳月』
   茨木のり子
   花神社
   
   訪ねてきた亡き夫の存在を感じた妻
   静謐で官能的なラブストーリーのよう。
   詩人の死後に発見された、亡き夫に
   捧げられた未発表の詩集。

***

泣けるいい話100の中の一つらしいです。
 こういう詩を 読ませてもらうと
ちゃらいことは いえないのです
だからだまって 静かに

絵だって この程度で わるかったかなあ
 
《 2018.01.21 Sun  _   》