「けったいなアメリカ人」米谷ふみ子著 集英社
ミラー、メイラー会談傍聴記 つづき
メイラー 「僕はあれは自分の生活から直接出た、経験の賜物やと思っております」
ミラー 「僕もそうやと思う。一方で、彼はとても優秀な大工やと思います。飾り戸棚作りやと思います。そやから、彼がホモセクシュアルやとか、そんな傾向があるとは考えられまへん」
メイラー 「彼はホモではなかったでしょうね」
ミラー 「無意識のホモやったやろな」
メイラー 「フロイドが言ったように、"彼は潜在性のホモセクシュアルを突然制御出来なく"なったのでしょう。それが『ヴェニスに死す』を書く強いモチベーションだったのに充分だったのかもしれませんね」
ミラー 「とてもええ話でしたな。映画も見ましたがね。あんた見ましたか。あの主役の少年が素晴らしく、僕自身も首ったけになってしまうかもと思いましたな」
メイラー 「そうなんですよ。僕もホモセクシュアルを味わう瀬戸際まで行ったという感じでした」
ミラー 「もう一人、非常に秀れた作家やと思たのがいます。ジョン・ドス・パソス。彼は僕より若かったんやがね。彼が僕より若いと聞いた時、どんだけ情のう思たことか。彼はもう何册も本を書いてたんでな。僕ときたら一冊も書いてないんやから。最初、アメリカに住んでた時、こう言う事柄でうんざりさせられましたわ。フランスに行ってから、そういうことは忘れたんやが」
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そうですか あの映画『ヴェニスに死す』美少年を見ると だれしもがひきよせられるのは よくわかりました。そういう話で ミラーとメイラーはだんだんもりあがっていくわけですね。こういうのが 対談の醍醐味なんでしょうね。
ところで ミラーも若い頃 すごい作家が出てくると 情のうなったんですね。
「こう言う事柄でうんざりさせられましたわ」
そうなんですね。「若いときミラーはそうだったんだ」と そう思って 「自分も」と言う若者もいるんじゃないですか。 もちろん それは年齢に拘らず あるかもしれませんが。
とくに若いときは 自分が何ものでもない時 そういう思いになるんですね。 若いときって そのやきもきでかたがこりましたよね。
みなさんはどうですか?
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さて 自分で盛り上がる才能を持つノリコ・リーですが メイラーはミラーに余り受け入れられてなかった風に感じられたところを ジョークなどで のりこえて 今やいい話に持って行ってますね。
そういうことでは やわな わたしには つまづくと しゅんとなって。
この二人がうらやましくなります。
やー ここはノリコ・リーのへやでっせ。しゃんとしなはれ。
この絵のことですが 若い時 私は 同じこの絵をなんまいかいたことやら。
だから いまとなっては もちごまで いろいろ遊んでみるわけです。
このでかい木の物は じつはお父ちゃん作の松の一部分なんです。
この絵を何枚かいたか おぼえてはいませんが これをえんえんとならべて
ああしたりこうしたりを おきゃくさんにまかせて (プレイルームのいれものから
材料を出したりしてね)自分ではそんなことを想像しましたが。