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セザンヌの手紙

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画室の一隅と画具  「セザンヌの手紙」のなかの写真 日下部書店 昭和17年

息子宛

 愛するポオル。
 今朝は気分が大分よいから、お前に返事を書くとしよう。お前の手紙は、いつも私には何より一番嬉しい。朝は、八時になるともう暑くなって来るので、私は四時半頃から仕事に取りかかることにしている。これで若かったら、と思うよ。
 若いうちにせいぜい励んでおくことだね。この頃はちょいちょいひどい埃り風が吹いて、厭な空模様だ。ほんの時たまにしか晴れ間を見せない。
 いろいろ報せてくれて有り難う。私はまあどうにかやっているから安心しておくれ。
 母さんによろしく。それから、私のことを憶えていてくれる人たちみんなによろしく。
なお、マダム・ピサロにも呉々もよろしく云っておくれ。思えば懐かしい。すべてが遠い昔のことのようでもあり、ついこないだのことのようでもある。
 お前のお父さんがお前をしっかり抱きしめる。
                        ポオル・セザンヌ
 叔母さんにはその後会っていない。私は彼女にお前の最初の手紙を送ってあげたよ。
 ときに、「浴みをする女」の小さなエスキイスがどこかにしまい込んであるかお前知ってやしないかね?

註 マダム・ピサロ カミイユ・ピサロは1903年の末、既に世を去っていた。
註 叔母さん セザンヌの妹マリイを指す。

***

外国のことを知ろうとする時 天候のことが実はよくわからないけれども とてもその場所を知る手がかりになると思いませんか? 雨がよく降るとか 寒いとか たしかパリの冬はとても寒いんでしたね。 エクスにおいても セザンヌは外に出て山やまわりの自然を描きますから 天候は重要です。描いている途中でびしょぬれになった時もありましたね。それで老人は体を壊してしまいますね。

この息子への手紙はとても愛情深いお父さんですね。奥さんにもね。亡くなったピサロの奥さんにも気づかっていますね。
手紙というのは手で紙の上に書くということですが 書き慣れた文字の味わい 言葉で直接話すこととは少し違った落ち着きといいますか いいもんですね。

セザンヌはふるさとエクスで さいごに「サント・ヴィクトワール山」だとか「庭師」だとかとてもいい作品を描いたのですね。
若い時はパリに出たりいろんなところを旅したりしていますね。
そうして「やはりエクスの景色だな」と しっくりときたのでしょうかね。
あたりまえといっちゃそれまでですが 絵もそのときどきで 変化をみせます。
セザンヌの「その全体を見てみる面白さ」を私は感じさせてもらいました。

私にも ここでいうのもなんですが そのときどきの絵があります。
「やっぱり自然だ!」セザンヌのような筋金入りのものはないものの(ふにゃふにゃですがな)
全体をみなさんに見てもらおうと思いましたです はい。

もういい加減におしまいにせんかいって? そうですよね。 
《 2017.02.06 Mon  _  1ぺーじ 》