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セザンヌの手紙

「セザンヌの手紙」ジョン・リウォルド編

中年期(1872−1886)つづき

ヴィクトル・ショケエ宛
   エスタク、1879年1月28日

 親愛なるショケエ殿。
 実はある件についてお問い合わせ願いたいと思い、一筆したためる次第です。ご迷惑のようでしたらご遠慮なくおっしゃってください。だとしたら、ダンギィさんに頼んでもいいのですから。ただ、あなたにお願いしたほうが一層満足な説明が得られると思っているわけなのです。
 お問い合わせ願いたいというのは、審査員の鑑査を仰ぐため美術局へ絵を遠方の地から送り届けるにはどういう方法を採ればよいか、また、かりにそれが却下された場合、いづれそういうことになりはすまいかとおそれていますが、その場合に当局は作品を地方にいる作者の許へ返送してくれるものかどうかの点についてのはっきりした説明です。無論、作品の発送と返送に要する費用がこちら持ちであることは承知しております。
 こういうことをあなたに敢えてお頼みするのは、僕自身にとっての必要からではなく、同郷の一友人のためなのです。なぜなら、僕自身はこの三月の初めにささやかな一族を引具してパリに出向くことになっているのですからその必要はないわけです。
 今年になってから馬鹿に湿っぽい天気が続くと思っていましたところ、幸い十数日前から当地はいたって爽やかな日和に恵まれるようになりました。
 では、ショエさん、勝手なお願いを申す失礼を何卒ご容赦ください。なお、奥様には厚く敬意を表します。
 家内と伜も、あなた方へくれぐれもよろしく申しております。
                          あなたの下僕(しもべ)
                            ポウル・セザンヌ

***

展覧会が近づくと こうして「あなたの下僕」などと手紙を書き送る まだ認められていないセザンヌの気の使いよう?でしょうか。
画家たちは 評論家や絵を買ってくれるお金持ちの蒐集家に話しかける努力をしていたのだと こういう手紙も何通かありますので そう思います。画家にとってそれは緊張を強いられることだったでしょうね。この作品が地方までもちゃんと送り返してもらえるものか そりゃあ 聞いておきたいですよね。ダンギィさんでもいいんだけど もちょっと このショケエさんに聞いておきたい。その本心はどこにあるのか?余計ですよね(笑い)。
(註)によりますとショケエという人は税関の役人で熱心な絵画蒐集家だったんですね。ドラクロアの作品をしきりに集めていたのですが次にルノアールの作品も集めはじめます。ルノワールは彼の肖像画を描いています。そのルノアールの紹介でセザンヌはこのショケエを知ることになります。後に彼はセザンヌの最も有力な支持者になります。

ルノアールの画集でショケエの肖像画探してみようかな。
《 2017.01.17 Tue  _  1ぺーじ 》