セザンヌの手紙 ジョン・リウォルド編
つづき
いやいやながらの受験勉強ではあったが、１８５８年１１月に文科のバカロレアに無事合格し、直ちに父親の云いつけどうりエクス法科大学へ入学することになった。しかし、法律学の勉強が彼に耐え難かったのは云うまでもない。ゾラへ宛てた手紙（同年１２月７日附）の中で彼はこう歌っている。
僕は法学という法外な道へ進んでしまった。
何たることぞ、人に強いられたとはいえこんな道へ。
法律学の忌まわしい蔓にからみつかれる
今後３カ年の生活を思えば
おお、身の毛はよだつ！
パルナッスの女神よ、
どうか僕の傷手を癒しにきて下さい。
心ならずもあなたに叛いた
このひん死の不幸者を憐れんで下さい。
無味乾燥な数学の問題、
数学教師の蒼ざめ皺寄った額、
血の気のない唇、まるで
地の下から（）い出た亡霊の経（）子
僕は知っている、美の神々よ
あなたが怖ろしさに顔をそむけるのを。
法事などを職に選ぶ者は、
あなたとアポロンの寵愛を失うにきまっています。
ミュウズよ、
蔑みのまなこで僕を見ないで下さい。
僕は只の不幸者で、
罪人ではないのだから。
僕の呼び声にこたえ、ミュウズよ
僕の不幸を救いにきて下さい。
さすれば僕も、いつの日か必ず
あなたの恩寵に酬ゆるでしょう。
＊＊＊
いやあ しかしこの若者は大変！
私も読んでるうちに 苦しくなってきました。
しかし このミュウズとはだれをさしているんでしょうね。
そんだけ法律がいややったら やめといたらええのにー
それが やっぱり親のいうことも聞かなあかんし
でも 晩年の偏屈者といわれたセザンヌではなく
かえって普通の若者に思えるから不思議です
そうではないですか？
私は すでに人生を終えてしまったセザンヌのことを
「セザンヌはすごい芸術家」と知ってしまった後で
この若き日の セザンヌの嘆きぶりを読んでいるわけなんですが。
これはゾラに送った手紙なんですよね
こういうとき ゾラはどういう反応を示したんでしょうね