NEKO美術館 成瀬憲子

夜の洗濯干場から　　１９８６　大阪時代

大阪でここへ来る前に住んでいた所は　交野市というところでした。

そこの電車の駅には「星田」というところがあったり　近くには「機物神社」というところもありました。「源氏池」どこかしら昔の歴史のあとがのこっている感じの所でした。

わたしは　その頃赤ん坊や幼児をかかえていて　夜もおむつを干したりしていました。

夜というのは　どこか昼間と違って　干場から見える景色が　いいのです。

そこにぶおーっと電車のライトがやってくると　それもまたいいのでした。

夫が新しい土地に引っ越しするといわなければ　充分満足していました。

しかし　また　なんかのきっかけでぱっと引っ越しを決める　夫じゃなかったら

あたらしい土地を知らずにいたことは確かです。

このまえ　その場所に行ってみました。

まるで知らない土地になっていました。アトリエのあった所も　いつもお昼にお好み焼きを買いにいったお店も　ありませんでした。もう２７年はたっています。

そこにいるときは　日常だったところでも　近所の人たちと親しくしゃべっていた所でも

別の所に行けば　そこはもう見知らぬ所になってしまいます。

干場で　した　たわいない世間話も

憶い出のほうが　はっきりしていたりして（この記憶の憶　偶然出てきたんですけど　いいのでそのままで）