ゼルマの詩集から 強制収容所で死んだユダヤ人少女 秋山 宏訳 1986
わたしのための子守唄
わたしは揺らしに揺らす わたしをゆらゆら寝かしつける
昼も 夜も 夢を見て
わたしが飲むのは しびれるワイン
目覚めながら眠る人のように
わたしは歌いに歌う わたしのためにひとつの歌を
希望と幸福の歌
わたしは歌う 返れないとはつゆ知らないで
旅立っていく人のように
わたしは語りに語る わたしのために物語を
愛の織物の物語
わたしは語る もう信じられない物語
でも 結末が暗いことはわかってる
わたしは弾きに弾く わたしのためにメロディを
もう何処にもない日々のメロディ
真実なんかにとらわれず
まるで盲目(めしい)になったように
わたしは笑いに笑う わたしを笑いとばす
この愚かなたわむれに
それでも 乱れ もつれた夢を織る
あらゆる目標うしなって
1941年1月 16歳5カ月
***
この「ゼルマの詩集」はふっと手に取ります。
16歳の彼女が 「あらゆる目標をうしなって」はとてもつらい言葉だけど 本当にそうだったんだなと思います。
それでも この詩のなかでは やすらぎや喜びを 最初に持ってきますね
「わたしは揺らしに揺らす わたしをゆらゆら寝かしつける
昼も 夜も 夢を見て」
そして つぎに
「わたしが飲むのは しびれるワイン
目覚めながら眠る人のように」とあらがえない運命に 身をおきます。
それが1フレーズごとに そのようになっていますね。
それは美しいと思います。この詩はとても美しいのです。
そして これらの詩が 死を前にした少女の書いたものだということが
(次になにをいっていいのかわからないとき そのままにしておきます)
この詩に出会った時 「人は絶望するんだろうか?」
わたしの場合は 「静けさとか安らぎ」を感じたりしました。
文字は声とはちがって静かに横たえたかたちです。
何を言いたいのかって?やっぱり次にいうことがわかりませんのでそのままにしておきます。
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上の写真はかって家にいたねこたちです。ねこはあったかいところを 上手に見つけます。てまえにはね いろんなものが少しずつ入ったカプセルがあります。ほかにもなにかありますが もう思い出せません。
さいならさいなら