who am ?I

PAGE TOP

  • 07
  • 18

ヨーロッパからの手紙

フーフー通信 ヨーロッパからの手紙 1985 夫

久しぶりの手紙 6月6日でとまってましたね(笑)
あーあつ。続きと言ってもわたしでさえ どこらへんからか忘れていますが まあ 気楽に読んでみましょう。

 それから小野くん。彼は23歳で、大学を中退したあと、建築デザインの仕事を少ししたあと、旅に出てきたということ。6カ月から9カ月の予定です。僕はこの小野くんとは、日本円で6円程の公共シャワー場(時間は30分の制限ですが、ホテルのお金を払ってのシャワーよりも出る湯の勢いも強くて、たっぷり風呂に入ったと同じ程の満足感が得られます。こうした公共のシャワー場を利用するのは生活の貧しい人たちや、僕たちの様な貧乏旅行者です)<一緒に行ったり、ホテルの近くのBAR(日本のバーのようなものでなく、喫茶と大衆食堂を会わせたようなところ)で夜更けまでいろいろ話し込んだり、またマドリッドから電車で1時間程の所にある城壁の町トレドへの1泊旅行も一緒にしました。トレドに行った時は、僕の痛む足をかばって、重い僕のリュックも自分のと一緒にかついでもくれました。彼のお父さんは串カツ屋さんをしているそうで、この旅のなかで、彼は、家の仕事を継ごうかと考え始めているとのことです。
 小野くんと眺めた真夜中のマジョール広場の光景は忘れられないと思います。細川くんと小川くんがピサ(六階建ての最上階の、いわば屋根裏の部屋といったおもむきのあるアパートです)に引っ越しした日、みんなとその手伝いをし、よふふけまでトモちゃんの手料理をたのしみながら、話し合っていたのですが、小野くんと2人でホテルに帰る途中、雨上がりのあとの人っ子一人いないマジョール広場の石畳を歩いていて、ふと、古い名画のなかの風景のなかに自分たちがいるかのように感じたことでした。一辺が百メートル以上もあるかと思われる正方形の石畳の広場です。ぐるりを囲んだ回廊になった建物からは無数の白光灯が雨に濡れた広場を照らしています。「目に焼きつけておきたい光景やな」と僕は思わず口にしたのですが、「じゃぁ、焼きつけましょう」とすぐさま小野くんがいい、僕たち二人は、誰もいない真夜中の広場にしばらく佇んだのでした。5月12日

***

たのしんでいますねー。なんかわたしは子育てにもたもたしているうちに 家のなかでの楽しみの権威になりましたですが 夫はこうした経験が ふらっと出かけられる人になったようですね。5人もいますと もう家でいた方がよくなるのです。
小野くんが串カツ屋さんを継ごうかと考えているという事や そうして旅のなかで若い人は いろいろゆっくり考えているのでしょうか。
シャワーの話ですが 日本にはお風呂屋さんや温泉がありますが シャワーだけがつかえるところってあるんですかね。ときに家を持たない人たちやがどういうところで体を洗っているのだろうと思う事があります。それと日本円にすると6円程というのが安いですね。地元の人にしたらその値段はどうなのかな。ずっと日本でいたがりのわたしですが
こういう夫のような旅行は まあ だいぶ前の話ですからなんともいえませんが 旅先で日本人に出会うと うれしいもんでしょうね。いろいろその国の事も教えてもらえるしね。勇敢に一人でその国に入っていく人たちもいるのでしょうが 言葉でつまずいたり 大変でしょうね。スペインで長く住もうという人たちはアパートを借りたりさらにいいところにシェアしたりしているんですね。わたしは外国の町や村をテレビなんかで見ますと
長くこういう所で住んだら どんなふうなんだろうと想像します。いつもバスに揺られていく旅行とはまたちがった気分でしょうね。生活があるというか。
真夜中のマジョール広場 これは目に焼きつけてきたようですが ちょっとおぼえているのか夫に聞いてみますか。

さいならさいなら
《 2016.07.18 Mon  _  1ぺーじ 》