「ピカソとその周辺」フエルナンド・オリヴィエ著 佐藤義詮訳 1964 昭森社
ルーヴルの盗難事件
結局、急いで夕食を済ませ、長い間夜中になるのを待ってから、彫刻を入れた鞄をセーヌ河に捨てにいく事に決めたのだった。彼らは真夜中頃鞄を持って、徒歩で、家を出て行ったが、二時に疲れ果てて、足を棒のようにして帰って来た。
鞄とその中身を、そのまま持ち帰った。彼らは機会を見出せず、また彼らの荷物を敢えて捨てることもできなかったので、さまよい歩いたのだった。彼らは尾行されているような気がした。彼らの空想は、次から次へと色々な幻影をでっちあげた。それにしてもわたしも彼らと共に心配はしたが、その夜の彼らをよく観察したのだった。恐らく嫌々だったろうが、彼ら自身、一種の喜劇を演じていたことは確かである。二人ともトランプなど少しも知らないのに、セーヌ川に出かける運命の時間を、「犯罪時間」の来るのを待ちながら、また確かにある悪党の真似をしようとして、彼らはその晩じゅうトランプをする振りをしていたほどだった。
手っ取り早く言えば、アポリネールはピカソの家でその夜を過ごし、翌朝パリージュルナール社に行って、出所極秘という条件で、「望ましからざる作品」を提供した。
パリー・ジュルナール社にとっては、この上もない拾い物という訳で喜んで採用した。それは予期以上の宣伝になった。
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この「ルーヴルの盗難事件」は一転二転するのですが ここでは結構長い文章になっています。オリヴィエが過ぎ去ってこうしたこの事件をかいてみると ピカソとアポリネールは悲劇と喜劇が入り混じった たとえばセーヌ河に彫刻を捨てに行こうとしたり それでもできずに持って帰ったり 警察に尾行されていると感じたり これだけでも映画一本つくれそうですね。さてその後どうなりますやら
さいならさいなら