コレクション
瀧口修造 1991 みすず書房
ゴーギャン 続きです。
この結末はたしかに肉体と心を苛まれていたかれにさいごの一撃をくらわしたのである。かれはモンフレーへの手紙でその窮状を訴え、1500フランの近作を依頼している。
「判事の奴め、とうとう僕の私信に対して、3カ月の懲役と1000フランの罰金を課したのだ。だからこれからタヒティへ救いを求めにゆかねばならない。船賃、滞在費、ことに弁護士に払う金!たいへんな額に上るだろう。これでは破産だ。僕の健康も破滅だ。僕の一生は、倒れたり、起ち上がったり、また倒れたりの連続だといっていい、だが僕の昔の力は日一日と抜けてゆく....」
ゴーギャンはこの手紙で罰金の額を倍の1000フランに誇張しているのが注目される。かれはもちろん再審を要求した。そして裁判から帰ると、即座に鉛筆で行政長官と弁護士へ送る手紙の草稿を書いているのである。その文脈は乱れがちである。
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「僕の一生は、倒れたり、起ち上がったり、また倒れたりの連続だといっていい、だが僕の昔の力は日一日と抜けてゆく....」
その額や健康のこと ゴーギャンは行政長官と弁護士へ送る訴状を書いていく訳なんですね。この切々とした訴状を読んでみました。憲兵隊長に長文の手紙の草稿を書いて、最後の打開をはかろうとしています。原稿は文字の判読すら困難だといわれ、モンフレーの遺族の手で保管されているといいます。
「しかしすべては終ったゴーギャンは5月8日に死んだのである。」
福島繁太郎さんのゴーギャンのところでも この瀧口修造さんのところでも 受け入れられなかった訴状の表現は 必死です。
それからこのゴーギャンの作品はどうなったのか 次のときに打ってみたいです。