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ゴーギャン

コレクション 瀧口修造 1991 みすず書房 

ゴーギャン 続き

 台風はマルキーズ島でも荒れ狂った。二昼夜降りつづいた雨で谷は氾濫し、橋は流された。 家は破壊され、巨木は根こそぎにされた。しかしゴーギャンの家の被害は案外軽微で、その修繕に数フラン要しただけですんだ。台風は去ったが、ゴーギャンは足の痛みを忍びながら、憲兵とのたたかいをつづけるのである。かれは泥酔罪に問われた原住民の裁判で酋長が偽証を強いられたことをつきとめ、この酋長の罷免を要求した手紙を二月(二十日?)付で憲兵班長に書き、同じ日に裁判官に対しても陳情書を送っている。
 「私は正義が無視されないために左記の申立をしたいと思います。即ち私が弁護人に指名された裁判において、酋長は法廷を去るに際して他の証人等の前で、ギュトン氏なる人物と次の会話を交わしたのであります。『かれらはほんとうに私に向って怒鳴ったのですかね?』『そうだとも、お前は被告が酔っぱらって八キロ先まで怒鳴ったのを聞いたと証言したことを恥じることはないよ』『わしは奴らに腹を立てていたので、そういったまでだ』
 酋長が偽証したことを認めた場合、それは法律の問題で、私の関することではありません。しかしギュトン氏が嘘をついたとすれば、これは私の問題で、かれがあくまで起訴されるよう要求します。今朝、憲兵班長は私の訴えを聴いてやると立派なフランス語で表明しました。しかし私も国語を相応に書くことでは人後に落ちません。よって貴下に一文を呈して貴意をえたく存ずる次第です。
 憲兵班長殿は声と身振りにやや憤慨の色を示して私を威嚇しようとこころみ、もし退官した暁には話をつけようと断言しました。世間周知のごとく、私は極めて小心な男であり、重い病身でもありまして、かかる場面は私の病気を一層重らせるばかりです。判事殿におかれては、私が極めて小心にして、ひたすら法律に従順なる人間であることを御賢察願います。
                          ポール・ゴーギャン」

***

私は ここのところを何度も読み返してみたのですが、酋長を弁護しようとしているゴーギャンと憲兵班長の『かれはほんとうに私に向かって怒鳴ったのですかね?』『そうだとも、お前は被告が酔っぱらって八キロ先まで怒鳴ったのを聞いたと証言したことを恥じることはないよ』これはゴーギャン以外に恥じることはない人物が他にいたのか とわからないのです。裁判ってものは 証言で勝つために がんばるもので ほんとうのことでけんかするところではないのですね この場合。だからよけいにわかりにくいし ずるくても 裁判の方法をよく知っているものが有利だというのが わかります。
「判事殿におかれては、私が極めて小心にして、ひたすら法律に従順なる人間であることを御賢察願います」これを読んでると フランスの官憲 判事などがいかに高圧的で 権力をふりかざしているのがわかります。ゴーギャンはそういわざるをえないことを 病身の身で知っているからでしょうか。こんなやったんや。「親分肌のゴーギャン」ってどっかに書いてありましたよね。

《 2016.06.24 Fri  _  1ぺーじ 》