who am ?I

PAGE TOP

  • 10
  • 31

ポール・ポアレと純粋芸術

『ピカソとその周辺』フエルナンド・オリヴィエ著 佐藤義詮訳の続きです。

ポール・ポアレと純粋芸術

 ある日今は亡くなったが、当時ピカソをちょいちょい訪れていた画家のティソンが、芸術並に何事に限らず新奇に見えるものを好む裁縫師で、ポール・ポアレという義兄を連れて来ると予告してきた。大変人気があり、彼の特技である裁縫では、非常に進んだ腕を持っていたポアレは、総ての芸術家に興味を抱いていた。彼はやってきた。この訪問は相当センセーショナルなものだった。彼はその単純さと気品という点では異議もあったが、実に凝った服装をしていて、愛想がよく、陽気で、どこか擁護者らしいところがあり、直に目を閉じて感服するという人だった。彼は部屋に入ると、グワッシュでか描かれた夫人像の商品の前で、バッタリ歩みを止めた。
「おお!驚くべきものだ!見ごとだ!素晴らしい!マダムの肖像ですか?」と、画家の愛人を指差しながら言った。
「そうです、マダムの...自画像です」
とピカソは冷笑を浮かべて答えた。
 彼は冷静だったろうか....恐らく侮辱された気持ちでは?
 私はその場に居合わせたのだし、失礼な間違いのために印象が悪かったこの最初の訪問を決して忘れなかった。
 ポアレはその後直ぐに彼の家にピカソとその一族を招いた。また晩餐やお祝いに招待した。彼らはそこで他の芸術家たちに出会った。ポール・イリーブ、ルパープ、ブサンゴール、リュック・アルベール・モロー、スュー、ドュノワイエ・ド・スゴンザックといった人々だった。後者はこの裁縫師と肝胆相照らす(かんたんあいてらす)親友だったが、彼の故郷の農夫の真似などして忘れられなかった。
 ポアレはまだデビューした時は、ローマ街にある家の最上階の一室に住んでいた。その裁縫所は当時パスキエ街にあった。しかし間もなくサントレノの郊外に移転した。
 彼が来客たちを親密にすることを心得ていた愛すべき趣向の中で行われた彼の夜会は、素晴らしく、自由で、陽気で、賑やかだった。彼は裁縫で高名を、名誉とも言うべきものを獲得したが、それは、彼の大胆さ、度量の広さ、技術に対する真の愛情から行言って、当然与えられるべきものだった。彼は大きく、広く観ていた。彼の贅を尽くした趣味と、また何か価値のあるものを創ろうという時には、商売上でも、作品のためでも、金に糸目をつけなかったことなどが、彼の大を成さしめたのだ。
 しかし彼が「純粋」芸術家をもって自認していたのを、アポリエーヌが黙視し得なかったことを、私は覚えている。彼はこの問題について一文を草し、裁縫を芸術として考えねばならぬとしても、それは下等芸術としてに過ぎぬであろうと言った。
 ポアレはそれを許さなかった。そしてそれ以後ギョームの話をするのに、私たちがよく止めねばならなかったような言葉を使った。
 しかし、その場に居合わせない者の弁護をするような友人は、この仲間にほとんどいなかった。それどころか厚い友情で結ばれているように見えても、一人の友人が立ち去るやいなや、彼が敷居を跨いだか跨がぬうちに他の連中が彼の悪口を言い始めたのを、私はしばしば目撃した。ピカソやマックス・ジャコブの大きな欠点の一つはこういうところにあった。それに彼らは才気を弄ぶ(もてあそぶ)という欲望を抑えきれなかった。彼らの親友をさえ犠牲にする「意地の悪い才気」を。

***

ピカソやマックス・ジャコブはけっしてよい子ではなかったのですね(笑)。友と言ってた連中でも 立ち去るや否や それらの悪口を言ってのけるような。

「裁縫師」のポール・ポアレは心の広い人だったようですが。当時のいまでいうファッションデザイナーですか そんな人のことを 裁縫師とよんでいたんでしょうか。このひとたちは素晴らしい服、個性的なものを創っても、芸術とは言わなかったんでしょうね。今のファッションショーなどを雑誌で見ても 何と面白い個性的な芸術だとも言えるんじゃないかと私は思うんですが。わくわくします。よく私はあのファッションショーの飾り付けを 自分がしている想像をして喜んだものです。

ピカソはすでに芸術家然としていて けっこう言いたいことを言っていますね。 お客様を商売上必要なのは画家も裁縫師もいっしょなのですが。でもオリヴィエはそういった人間関係をシビアに観察していますね。

このアポリネールのことはどう云う意味なのかしら? つまり「裁縫を芸術と考えねばならぬとしても、それは下等芸術としてに過ぎぬであろうと言った」これですか。
ふっと思ったんです。草間彌生という芸術家は その境目を取り払ったよね。アウサン・チンチャウロウでしたっけ? 彼女だって。私もちびですが 後に続きますね(笑)

芸術家の世界って実は...まいいか。 アポリネールって けっこうやなやっちゃなあ

さいならさいなら


《 2015.10.31 Sat  _  1ぺーじ 》