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1ぺーじ




『植草甚一 ぼくのニューヨーク案内』の続きです。
植草甚一コラージュ日記を終わりにしたわけではないのですが、ちょっとニューヨークに行ってきまーすというわけです、はい。
この写真と文面の前に文章があります。

 ニューヨークに来てから四十三日までが長い一日みたいに感じられてしょうがないのは、毎日の面白さが一日ごとにもっと面白くなりながら、前のことを忘れるようにさせてしまい、そうして夢を見なくなったからであって、そのため時間が停止したようになっている。一日だけ夢を見たのは遅く帰って来た晩に、原稿を書かなければならないなと思い、めんどうくさくなってその晩だけバスにつからなかったからだった。ところが時間が停止したようになっているし、面白かったAの日のことが、もっと面白かった翌日のBの日のことで消されたようになってしまい、その連続だったから原稿が書けるはずがなかった。
 まあそんなことは、いまはじめて原稿を書いているんだから、どうでもいいや。けれどまた一つの理由として、通じるはずの言葉が通じないことがあった。ホテルに着くと三十分後に部屋をとび出して、最初に書いたようにダブルデー書店に行ったが、そのそばにリッツォーリというフランスの本を打っている本屋があって、はいってみるとフランスの新刊小説でほしいのが沢山あった。両方の本屋で買ったのは大きくてじょうぶな紙のバッグにいれてくれたけれど、それを両手にぶらさげて歩いていると、のどがかわいてくる。コーヒーが飲みたくなってくるのは当たりまえだ。
 ここへ来るまえからニューヨークにはコーヒーだけ飲ませるところはないよと教わっていた。なるほどデリカテッセンとかコーヒーショップとか書いた店は、フィフス・アヴェニューをまがると沢山あるけど、コーヒーショップにはいってみると、カウンターに腰かけたのがみんなケーキやパイみたいなものをたべている。ぼくはコーヒーをくれと言った。ところがコーヒーと言ったのがアクセントのつけかたが悪いせいか通じない。それでコーヒーとケーキと言った。そうしたらケーキという単純な言葉が通じない。これもケイキというふうに力をいれて発音したからだろう。タクシーに乗ってプラダ・ホテルに行ってくれと言ってもプラザと発音するのが通じないので困ってしまった。そのうちケーキとかコーヒーとかプラザというふうに簡単だけど通じなかった単語や地名のリストをつくってみよう。

 そうして暖かかったたり晴れた日などは、みんながビューティフル・デイといって挨拶するんだ。どうしてナイス・デイと言わないんだろう。そんなことばかり考えていることも多かった。とにかくコーヒーがやたらと飲みたくなるし、タバコをひっきりなしに飲んでいる。そうしてケーキが大きいので半分しかたべられない。最初の一日半はケーキだけたべて暮らしたっけ。(前)

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「ニューヨークに来てから四十三日までが長い一日みたいに感じられてしょうがない」いいなあ、この表現、やっぱり植草さんだわ。それから四十三日まで原稿を書けなかった理由を書いてあって、それさえもいい。(ファンになってしまったかなあ)(ファンでしょ) ニューヨークに来てから一日だけ夢を見た日があって(これがまさに謎というふうに書く植草さん)。(つまり原稿を書けなかったって理由、こんなに長く書ける?)おしまいに、「いまはじめて原稿を書いているんだから、どうでもいいや」とくる。 なんか、文章の魅力的なレッスンを受けていると私は感じてます自由でね、はい。
 
ダブルデー書店(英語って、なんか名前の付け方、大雑把じゃないですか?英語をあまりわからない自分が言うのもなんですが)のそばにリッツォーリというフランスの本を売っている本屋へ行く。 (本って本当に何冊にもなると重たいですよね) そこでコーヒーを飲みに入る。ここでは、コーヒーだけ飲ませるところって少ないんですね。 イギリスに夫せいと行ったときもやはり日本でいう喫茶店を見つけることが出来ませんでした。(パブでコーヒーとタバコをすう夫せいでありましたよ) そしてカウンターで立ったままなんかをつまみながらコーヒーを飲んでるイギリス人。 で、飲み終わるとすぐきりあげる(まあ会社に行く前だからかな)、そんなふうでしたよ。 「テーブルと椅子となるとねだんが高いんだよ」と。 でも植草さんだって私だって、そのカウンターは高すぎて、別の意味でかっこうがつきませんです。 もうこうなるとまさに外国ですよね。

 コーヒーってあちらさんにわからせるにはどう発音するんです? イギリスでの話ですが、アジア系のレストランで女の店員さんはコーヒーのことを「コッピ」と言ってたなあ。 中華風のレストランだったから、餃子でもたべようというので、「餃子ちょうだい」と言おうとしたら通じない。 後でわかったんだけど、「トップンカー」だったかなあ。 あらゆるてだてでもって相手にわからせようとしたんだけど。 明くる日、道でもう一度そのレストランのお姉ちゃんにあったので「トップンカー」て声かけたら笑ってたっけ。
 
でも、こたつに入りながら思うんですけど、私も夫せいも一応絵描きなんだから、餃子の絵をかきゃあよかったんですよね。 植草さんだってそうですよ。 カップに湯気たったコーヒーを描く。みるくのピッチャーなどもつけてね(よけいなお世話か)。 みをぎさんは「ビジンイングリッシュで」みたいな冗談いってましたけど、いくら美人でも絵を描かなきゃ通じないかも。 プラザ・ホテルは運ちゃんにパンフレットをみせて「ここ」と指差すとか。 でもそういうことをあらかじめ用意しないのが「植草流」なんですよね。 通じなかった単語や地名のリスト、できたんかなあ。

暖かかったり晴れた日はビューチフル(なまるなって)デイ、ナイスデイじゃなく(がってん)。 あちらではコーヒーがやたらと飲みたくなるし、タバコをひっきりなしに飲んでる(タバコを吸うためにコーヒーを飲みに入るんでしょ。夫せいと歩くとコーヒーとタバコのための休憩がやたらと多いかったんです。タバコをやめた夫せいは喫茶店にはあまり入ろうとはしません。家でコーヒーを飲んでまっせ) ケーキはあちらさんの身体にあわせてるのかなあ(そんなでかいケーキねえ)。

 植草さんは一人でニューヨークで暮らしたんだ、結構長いこと。(やや!66歳のときはじめてニューヨークに行くとある) わたしにそんなことできるかなあ。まいった。 それでも植草さんは、日本でアメリカの雑誌も読んでたから、そりゃあ違いますよね、初心者とは。 日本で読んだ本に載ってるところに行きたいとそわそわしてたんでしょうね。「四十三日間」ひたすらコーヒーとタバコをすぱすぱやりながら本屋が宵をしてたんでしょうか。

 村上春樹は外国でジョギングしてる、とどっかに書いてありましたよね。日本でもやってたからでしょうね。 植草さんは本。 そういうことがあると、外国で暮らす上で心配なこととかは二の次になるのかなあ。 わたしは海外旅行に行くとなると、心配が先に立って、元気が出ないんです。 あそこはあぶない、とかいろいろ。
 
さて、原稿を書かなきゃ、植草さん。 
「十三丁目にある映画館にヒッチコックの映画を見に行く話」から。 でもハッキリ覚えていないので、確かめに行く植草さん。ウィレンツという本屋、マルボーとマクドゥーガル・エイトストリート・ペーパーバックショップ(なんて長い名前なんだ)バーゲン本がたくさん積んである。 ちょいちょい買って一五〇冊ぐらいになった?(すごい。でも、日本では高いとか買えないとか、そういうことでそうなったんだろうな)これでおしまいと思ってたら、新しいのがまたふえて本人も驚いている。 ドゥニア・B・クリスチアー二著「フィネガンズ・ウェイクのスカンディナヴィアン的要素(七ドル五十セントの定価が一ドル六十九セント)(えー安くなってる!)アーノルド・ゴールドマン著「ザ・ジョイス・パラドックス」(定価がわからないけど八ドルぐらいのが二ドル半)、クライヴ・ハート著「フィネガンズ・ウエイクの構想とモチーフ」(八ドルが二ドル九十五セント)、トマス・E・コナリー編著「ジェイムズ・ジョイスの(スクリブレッデホブル)(六ドルが一ドル六十九セント)(しかし、ヤヤコしいカタカナで)、ほかにイングマール・ベルイマンを研究したヴァーノン・ヤング著「シネマ・ボレアリス」(十二ドル五十セントが四ドル半)があったんでうれしくなった(ほんとですね)

(露覇主さん、「ぼくの伯父さん」はジャック・タチのつくった映画の中の曲だそうですね。 夫せいが教えてくれましたよ。(こっそり告白しますが) 忌野清志郎は高校の美術の先生のこと「ぼくの先生、ぼくの好きなおじさん」って歌ってるんです、似てるでしょ?)

ああいい買い物をしたなあ、そんな気分になりましたよ、植草さん! 
じゃあ、きょうはこんなところで。 またあした、さいならさいなら。
ああー!文面と写真がない。1ぺーじぱーと2に、お願いしまーす。(ミスのりばあです)
《 2015.01.28 Wed  _  ちまたの芸術論 》