『死ぬ気まんまん』 佐野洋子 光文社文庫 です。
この作家は1938年北京生まれ。武蔵野美術大学デザイン科卒業後白木屋デパート宣伝部勤務を経て、ベルリン造形大学でリトグラフを学ぶ。帰国後、デザイン、イラストレーションなどの仕事を続け、絵本作家としてデビュー。代表作に『100万回生きたねこ』『おじさんのかさ』『わたしのぼうし』など。エッセイストとしても活躍し、『神も仏もありませぬ』で2004年小林秀雄賞、など。2010年死去。72歳。
佐野洋子の本は、絵本よりエッセイを読みました。 彼女の家族の話を覚えている順に書いてみます。 怒りっぽいが大好きだった父。母とはずっと葛藤が続いていた。幼い時母と手をつなごうとして払いのけられた。そのことを根に持ち続けた。母は病弱な兄を溺愛する。彼女のことには関心がないように見えた。彼女は丈夫で生意気だった。母も気が強かった、娘には特に。
北京で生まれた。そのころ日本人は中国ではいばっていた。戦争で負けるまでは。状況は一転した。そんな状態を子供の彼女はみてきた。日本に帰って来た。父も兄も弟もはやく亡くなった。妹と彼女が母とともにのこされた。母は会社の寮母をして、子供を大学までやった。彼女は結婚した。男の子を授かった。しかし離婚。谷川俊太郎と再婚。離婚。鬱病が彼女を苦しめた。その話はリアルだ。癌になる。不思議なことに気持ちが晴れた。「母は死ぬ気まんまんですよ」と息子が言って、それがこの本のタイトルになった。
この作家はわたしにとっては不思議な人です。どういうふうに不思議なのかというと、自分のことを、自分のまわりのことを悪口めいたことも含めてリアルに書いているにもかかわらず、なんていうかなあ、書いてしまって押しつぶされていなさそうだというところとか、が不思議につながるのかなあ。身内のことはデリケートだと思いますが、彼女は遠慮してるふうではありません。しかし読者のわたしは元気になる。人はこんなに人のことを憎むのだな、とか、死というものは解放にもなりうるのかとか、いい人でいることから自由になる、とか。どちらかというと女が読みたくなる本を書く作家かなともおもいますが、どうでしょう。 老いていくこともみごとに無惨に書いています。そんなだから、これからも佐野洋子の本は手放せないのです。