2024.05.10
20240510
私が住んでいる宝塚市にはスターバックスが2件ある。ただ、いずれも私の住むエリアから見えれば最も遠い市内、車で30分はかかる場所にある。だから、私の生活圏内にスターバックスはない、と言っていい。そしてそれは、とても悲しいこと、である。
1996年に東京の銀座に1号店がオープンしたスターバックスは、田舎育ちの私にとって憧れのコーヒーチェーンだった。1997年に大学進学のために関西へ。1998年に大阪の梅田に1号店がオープンした時は興奮した。やがて関西にも都市部を中心にぽつりぽつりと店舗数が増えはじめたが、いつまで経っても自分が住んでいる生活圏内にスターバックスがオープンしたことは今現在に至るまでない。だから、私にとって今現在もスターバックスは憧れのままである。
大学時代は、神戸にあるスターバックスへ休日になると出向き、そこでドリップコーヒーの Tall を買って本を読んだ。卒業をして仕事をはじめたら、当時クライアントだった会社が入ってるビルに出向くたび、道中にあったスターバックスでやっぱりドリップコーヒーの Tall を買ってから打ち合わせに臨んだ。店内に入れば他のコーヒーチェーンとはどこか違う、上品ではないけれど洗練されたように感じる珈琲のかおりに包まれて、私は簡単に “イケてる” 気分になった。
結婚をして家族ができてからはスターバックスへ行くことが数えるほどしかなくなってしまったけれど、メロンやイチゴやシャインマスカットなど季節のフラペチーノはいつもこっそりと楽しみだし、今でもどこかへ出掛けたときにスターバックスを見ると「あ、スタバがある」とそのまちに住む人たちが羨ましくなる。
私にとってスターバックスがある街は、町は、誰がなんと言おうと、いいまち、なのだ。
正直、スターバックスのコーヒーが格別おいしいとは思っていない。スターバックスに対してこのような感想を持っていることが “イケてる” ことだとも思っていない。けれど、スターバックスがある街は、町は、誰がなんと言おうと、いいまち、なのだから、そんなスターバックスが近くにないことは、とても悲しいことなのだ。
・・・でも、こう考えてみたらどうだろう。
もしも願いが叶って近くにスターバックスができたとしよう。きっと私は月に20回は通うことになると思う。そこではドリップコーヒーの Tall を買うことがほとんどになるはずだから「420円 × 20日=8,400円」。ときどきはフードも食べるかもしれないから月に10,000円は使う。すると私は「120,000円/年間」をスターバックスに払うことになる。
仮に成瀬文子さんと結婚をしてからの17年間。生活圏内に常にスターバックスがあったとしたとしよう。私は17年間で「204万円」をスターバックスに払っていたことになり、成瀬文子さんも同じようなサイクルでスターバックスを利用していたとしたら「408万円」を使っていたことになる。
年間240回。17年で4,080回もスターバックスに通うことができるチケットを一人204万円で買う。それが自分の人生にとってかけがえのない、とても有意義な時間であるのだろうことに疑いはないけれど、一方でそれでもここで算出された金額を高いと思うか安いと思うのかは人それぞれだ。ただ、少なくとも我が家の家計がこの17年間で「408万円」浮いたのは紛れも無い事実である。感謝しかない。感謝するしかない。
スターバックス、近くになくて、ありがとう。・・・はぁ?
◎【Today’s Memo】は平日の毎朝8時に更新。atelier naruse 代表・早川による、ちょっとしたエッセーのようなもの、です