2023.06.23
20230623
44年、もうすぐ45年。決して短くはない時間をそれなりに一生懸命に生きてきました。勉強、スポーツ、恋愛、仕事、結婚、子育て。ときには挑戦をし、たくさんの失敗をして、笑い、喜び、悲しみ、苦しみ、ときには悔しい涙を抑えきれなかったことだってもちろんありました。そして、そこで得たさまざまな経験は、“私” という人間をすこしずつではありますが、成長をさせてくれているはずです。
たとえば、はじめての場所へ旅行に行くとき。その行き道は、はじめて見る景色の連続に興奮をしていることで、時間が流れるスピードはとても遅く、とても長く感じます。一方で、その帰り道は一度見た景色のなかを帰宅することになります。そうすると、その時間はとても早く、とても短く感じます。年齢を重ねることで人生という名の時の流れが年々早く感じるようになっているのは、きっとそういうことなのでしょう。それは、もしかすると、すこし、悲しいことなのかもしれませんね。
しかしながら、やはり積み重ねた経験は、若かったあの日の自分にはない強さをもたらします。それは “強さ” などではなく、ただ “鈍感になっただけだ” と言い替えることができるのかもしれませんが、それでも、かつて目にしたことがある、耳にしたことがある、味わったことがある、触れたことがある、感じたことがある、そういった経験が増えてゆくことで、私は自身にふりかかってくる大抵のことに対して動じることが少なくなりました。凸凹がなくなり、どんどんと舗装されてゆく “私道” を進んでゆくのも、悪いものではありません。もしもそれがつまらなくなったら、それが何歳であっても “あたらしいこと” をはじめてみればいいのです。私が昨年から釣りを趣味にしているのはそういうことかもしれません。わからないことだらけ、できないことだらけ。それはそれで、本当にたのしいものです。
・・・などというようなことを書く私に私は問いたい。いいですか。あなたは本当に成長をしているのですか。経験を積み重ねることで動揺をしなくなった。それは本当のことですか。人間なんてものは、本当はいつまで経っても成長なんてしやしないのではありませんか。動揺しまくりなのではありませんか。何度も同じ失敗を繰り返すのではありませんか。実際に私は今、“アレ” と同じことがこれから先の人生で何度起こるのだろうと想像をするだけで、足ブル膝ガク顎アイーンです。
私、とある友人のお店へ行きました。とてもとても素敵な、そのお店のオーナーが友人であるということだけで誇らしい気分になる、そんなお店です。訪れたのは夕暮れ間近。お店は閉店時間近くになっていたにもかかわらず、素敵なお店には、それが平日であっても次々と素敵なお客さんがやってくるものです。私は邪魔になってはいけないとスマートに用事と買い物を済ませ「じゃあ、また」と素敵な笑顔でお店を後にしました。でも、せっかくここまで来たのだから、すこしだけ近所を散歩しよう。私はお買い物をした商品が入った紙袋を手に持ったまま、お店の周りをのんびりと歩くことにしました。雨は束の間降ることをやめていて、梅雨らしくないすこしひんやりとした夕暮れのなかには、それでも、あたらしい夏の匂いが混じっていました。
そのときです。
ごぎゅるるるるるる。
あなた、突然、お腹が痛くなりましたよね。一気に顔面蒼白になりましたよね。あなた、そのときにどうしましたか。とりあえず周りをキョロキョロしましたよね。めちゃくちゃキョロキョロしてましたよね。その行動になんの意味があるのですか。草むらを探していた? あなた、44歳ですよ。軽犯罪ですよ。ほら、お店は近くにあるんですよ。お手洗いを借りればいいじゃないですか。でも、あなた。さっきあなたが帰るときにお店に入っていったお客さんのなかにキレイな人がいたことを覚えていましたよね。で、どうしましたか。あなた、オーナーに電話しましたよね。それは、何の電話ですか。「もうお店にキレイな人いない?」。そう聞こうとしましたよね。完全にパニック状態ですよね。でも、お腹はもっとパニックですよね。どうするんですか。そうです。お店にさっさと行きなさい。まったく。でも、おかげで危機は回避できましたね。よかったですね。でも、あなた。「良いお年をー!」とバイバイした後にバイバイした相手とスーパーですぐにまた会っちゃった感じの恥ずかしさをオーナーにずっと感じていましたよね。ついでにトイレの個室に行くことができない小学生の気分も感じていましたよね。まだパニックを引きずっていましたよね。いいですか。何度も言いますが、あなた、44歳ですよ。それであなた、その場から逃げるように去った後、何をしでかしましたか。買ったものをお店に忘れましたよね。「てへへへへへ😜」。てへへへ、じゃねーよ!!
と、ことほどさように。これまでの人生で幾度となく経験してきたお腹のビッグウェーブ🌊。この世に生を受けて44年。私はこれまでもそうであったように今回も慌てふためき、動揺をし、まるで平静でいることができませんでした。情けない。恥ずかしい。カッコよくなんてない。でも、それが人間さ。これから先の未来。いつかまた必ずやってくる “アレ” のとき。そのときの未来の私がどうか健やかでありますように。その側にトイレがありますように。
というわけで。
みなさま、今週も大変お疲れ様でございました。週末はどんなお天気なんでしょうねえ。来週はどんどんと気温も上がってくるそうですが、冷たいものは食べ過ぎませんように。だって。おなかがいたくなっちゃうからだよ!
◎【Today’s Memo】は平日の毎朝8時に更新。atelier naruse 代表・早川による、ちょっとしたエッセーのようなもの、です