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モームさん

スキャン4756.jpeg『月と六ペンス』

 食堂は混みすぎて窮屈だった。勅撰弁護士とその妻、官吏とその妻、ストリックランド夫人の姉とその夫のマックアンドルー大佐、それに国会議員の妻が居た。一堂の品位のあることはものものしいばかりだった。婦人たちはあまりにも善良なためよい着こなしができないし、すっかり自分の地位にあぐらをかいているために、人にお世辞もふりまきもしない。男たちはでんと落ち着き払っている。自己の成功に満喫しきっているという感じが、その場のすべての人につきまとっていた。 
 この会を円滑にしたいという本能から、だれもがふだんより少し大声でしゃべっていたので、部屋はまことに騒がしかった。しかし、全部の人の共通の会話はひとつもなかった。めいめいが隣席の人に話しかけている。スープと魚と、アントレー(魚と肉の間に出る料理)の間は右隣の人に話しかけ、焼き肉とデザート
の間は左隣に話しかける。政局について、ゴルフについて、或は子供について、最近の芝居、王立美術館の絵画、天候、休暇の計画について話す。一瞬のとぎれもない、しかも声はますます大きくなる。ストリックランド夫人が内心会の成功をよろこんでもいいところだろう。夫の方は、主人役を堂々と演じていた。おそらくあまりしゃべらなかったんではなかろうか、終わりごろになると、彼の両側の夫人の顔にグッタリとした色が浮かんでいるような気がした。何と重苦しい男だろうと思っているのだろう。一、二度ストリックランド夫人がやや気がかりげに夫を見つめていた。
 遂に夫人は席を立ち、婦人たちを部屋から連れ出した。ストリックランドは妻が出て行くと戸を閉めて、テーブルの反対側の端に移り、勅撰弁護士と官吏の間に座を占めた。もう一度酒をまわし、客に葉巻を渡した。勅撰弁護士が実にいい酒だとほめると、ストリックランドが手に入れた場所を我々に教えた。そこで酒や煙草のの話が初まった。勅撰弁護士はいま扱っている事件について語り、大佐はポーローの競技について語った。私は何も言うことがないので、黙って座って、いんぎんにみなの話をさもおもしろがって聞いているふりを装った。そして、誰も私なんか眼中にないらしいのをいいことにして、思うがままにストリックランドを観察した。

このページを読んでいて 夕食会に夫婦同伴で形式上招く昔ながら(だと思う)のやり方があるのだと
思いました。映画で見る 大掛かりな晩餐会は それははなやかなものであり 舞踏会でもありですが
このような夕食会は ストリックランド夫人が言ってたように窮屈で退屈な会であったのかもしれません。
それは芸術家達や作家達の集まりとはまたちがっていたのかも。

ー婦人たちはあまりにも善良なためよい着こなしができないし、男たちはでんと落ちつきはらっている。自己の成功に満喫しきっているという感じが、その場のすべての人につきまとっていた。
ーアントレーの間は右となりの人に話しかけ、焼き肉とデザートの間は左となりに話しかけるー

いやあ そんなものですかね。でも私には日本という それもそういう生活に慣れていないものにとっては たとえそれがイギリスでは退屈そうであっても パーティーの一つとして「こんな感じなんだ」と
とらえたりします。食事にしても伝統的な決まり、順番がありますね。隣同士も一応会話をしようとしてる。てなことを考えながらの このページでした。
ストリックランド夫人はそんななかで 気を使っていますね。 ご婦人方をべつの所に移した時点で けっこう大体同じ人たちということで うまく生きはじめているようにみえますが。
主人公のストリックランドに対する観察はどんなものなんでしょう

きのうはトーマス・ハーディ原作の『はるかな群衆からはなれて』というかなり昔の映画を見ました。
ジュリー・クリスティーヌ、アランベイツ、テレンス・スタンプ(まちがってるところもあるかもしれません)
ジュリー・クリスティーヌは映画雑誌でよくみた女優さんです。

このコラージュはなんだって?


《 2021.02.21 Sun  _  読書の時間 》