こころ 先生と遺書 夏目漱石 つづき
ー私はこういう矛盾な人間なのです。あるいは私の脳髄よりも、私の過去が私を圧迫する結果、こんな矛盾な人間に私を変化させるのかもしれません。
ー私は暗い人生の影を遠慮なくあなたの頭の上に投げかけてあげます。しかし恐れてはいけません。暗いものをじっと見つめて、そのなかからあなたの参考になるものをおつかみなさい。私の暗いというのは、もとより倫理的に暗いのです。私は倫理的に生まれた男です。また倫理的に育てられた男です。その倫理上の考えは、今の若い人とだいぶ違ったところがあるかもしれません。しかしどう間違っても、私自身のものです。
ふむ