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こころ 夏目漱石

「こころ」夏目漱石 先生と私 つづき

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 先生はうれしそうな私の顔を見て、「もう論文は片づいたんですか、結構ですね」と言った。私は「おかげでようやくすみました。もうなんにもすることはありません」と言った。
 じっさいその時の私は、自分のなすべきすべての仕事がすでに結了して、これからさきはいばって遊んでいてもかまわないような晴れやかな心持ちでいた。私は書き上げた自分の論文に対して十分の自信と満足をもっていた。私は先生の前で、しきりにその内容を蝶々(ちょうちょう)した。先生はいつもの調子で、「なるほど」とか、「そうですか」とか言ってくれたが、それ以上の批評は少しも加えなかった。私は物足りないというよりも、いささか拍子抜けの気味であった。それでもその日私の気力は、因循(いんじゅん)らしく見える先生の態度に逆襲を試みるほどにいきいきしていた。私は青くよみがえろうとする大きな自然の中に、先生を誘い出そうとした。


「先生と私」ですね
その内容を蝶々した こんな言葉使ったことないですが 感じがわかるというのはおもしろいですね
先生は「なるほど」とか、「そうですか」とか この若者のはしゃぎぶりにあわせることなく 言ったわけですね そういうところが 若者と 老人のちがいなのかと 


《 2019.03.16 Sat  _  読書の時間 》