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こころ 夏目漱石

「こころ」夏目漱石 先生と私 つづき

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 「よくころりと死ぬ人があるじゃありませんか。自然に。それからあっと思う間に死ぬ人もあるでしょう。不自然な暴力で」
 「不自然な暴力ってなんですか」
 「なんだかそれは私にもわからないが、自殺する人はみんな不自然な暴力をつかうんでしょう」
 「すると殺されるのも、やはり不自然な暴力おかげですね」
 「殺されるほうはちっとも考えていなかった。なるほどそういえばそうだ」
 その日はそれで帰った。帰ってからも父の病気のことはそれほど苦にならなかった。先生が言った自然に死ぬとか、不自然の暴力で死ぬとかいう言葉も、その場限りの浅い印象を与えただけで、あとはなんのこだわりを私の頭に残さなかった。私は今まで幾たびか手をつけようとしては手を引っ込めた卒業論文を、いよいよ本式に書きはじめなければならないと思いだした。


ここの表現は 私には はじめてです。
「不自然な暴力」「不自然な暴力のおかげ」 
《 2019.03.10 Sun  _  読書の時間 》