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こころ 夏目漱石

「こころ」夏目漱石 先生と私 つづき

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 私の行ったのはまだ灯のつくかつかない暮れ方であったが、几帳面な先生はもう家にいなかった。「時間におくれると悪いって、つい今しがた出かけました」と言った奥さんは、私を先生の書斎へ案内した。
 書斎にはテーブルと椅子のほかに、たくさんの書物が美しい背皮を並べて、ガラスごしに電灯の光で照らされていた。奥さんは火鉢の前に敷いた座布団の上へ私をすわらせて、「ちっとそこいらにある本でも読んでいてください」と断わって出て行った。私はちょうど主人の帰りを待ち受ける客のような気がしてすまなかった。私は畏まったまま(かしこ)煙草を飲んでいた。奥さんが茶の間で何か下女に話している声が聞こえた。書斎は茶の間の縁側を突きあたって折れ曲がった角にあるので、棟の位置からいうと、座敷よりもかえってかけ離れた静かさを領していた。ひとしきりで奥さんの話し声がやむと、あとはしんとした。私は泥棒を待ち受けるような心持ちで、じっとしながら気をどこかに配った。


きょうは 信州は 寒いです
昔の人は火鉢ひとつで いやあ そのことに驚きます
私の故郷の 兵庫の山あいの村で やっぱりすきま風のはいって来る部屋は
ほりごたつのあるところだけが あたたかい。火鉢だってそうですよね。
そういうことで すましてたんですよね。 ないところだと 寒くて 私たち子供は 
ほりごたつのなかに すっぽりはいって動きたくなかったものです
何の話でしたっけ
そうそう この人は 先生の帰りを 書斎で待たしてもらうんですね
《 2019.01.28 Mon  _  読書の時間 》