who am ?I

PAGE TOP

  • 12
  • 26

こころ 夏目漱石

「こころ」夏目漱石 つづき


 今言ったとおり先生はしじゅう静かであった。おちついていた。けれども時としてへんな曇りが、その顔を横切ることがあった。窓に黒い鳥影がさすように。さすかと思うと、すぐ消えるには消えたが、私がはじめてその曇りを先生の眉間に認めたのは、雑司が谷の墓地で、不意に先生を呼びかけた時であった。私はその異様の瞬間に、今まで快く流れていた心臓の潮流をちょっと鈍らせた。しかしそれはたんに一時の結滞にすぎなかった。私の心は五分とたたないうちに平素の弾力を回復した。私はそれぎり暗そうなこの雲の影を忘れてしまった。ゆくりなくまたそれを思い出させられたのは、小春の尽きるにまのないある晩のことであった。
 先生と話をしていた私は、先生が毎月例として墓参に行く日が、それからちょうど三日目に当っていた。その三日目は私の課業が午で終わる楽な日であった。私は先生に向かってこう言った。
「先生雑司が谷の銀杏はもう散ってしまったでしょうか」
「まだ空坊主にはならないでしょう」
先生はそう言いながら私の顔を見守った。そうしてそこからしばし目を離さなかった。私はすぐ言った。
「今度お墓参りにいらっしゃる時にお伴をしてもよござんすか。私は先生といっしょにあすこいらが散歩してみたい」
「私は墓参りに行くんで、散歩に行くんじゃないですよ」
「しかしついでに散歩なすったらちょうどいいじゃありませんか」
 先生はなんとも答えなかった。しばらくしてから、「私のは本当の墓参りだけなんだから」と言って、どこまでも墓参と散歩をきり離そうとするふうにみえた。私と行きたくない口実だかなんだか、私にはその時の先生が、いかにも子供らしくて変に思われた。私はなおと先へ出る気になった。
「じゃお墓参りでもいいからいっしょにつれていってください。私もお墓参りをしますから」
 じっさい私には墓参と散歩との区別がほとんど無意味のように思われたのである。すると先生の眉がちょっと曇った。目のうちにも異様の光が出た。それは迷惑とも嫌悪とも畏怖とも片づけられない微かな不安らしいものであった。私はたちまち雑司が谷で「先生」と呼びかけた時の記憶を強く思い起こした。二つの表情はまったく同じだったのである。
「私は」と先生が言った。「私はあなたに話すことのできないある理由があって、ひとといっしょにあすこへ墓参りに行きたくないのです。自分の妻さえまだつれて行ったことがないのです」


自分の妻さえまだつれて行ったことがないのです

墓参と散歩の区別がほとんど無意味のように思われた学生(はじめて こう呼んでみようと)ですが 「先生の眉がちょっと曇って 目のうちにも異様の光が出て それは迷惑とも嫌悪とも畏怖とも片づけられない微かな不安らしいものであった」とのこと
つい私はその表情を真似してみようとしていることに気付くのでありました
しかし そんなの容易にできるものではありませんよ
この表情は海水浴の時と同じだった

そうですか
このお墓が 何か特別なところであることは わかりましたが 
自分は これに 行かずに この表情のできる俳優さんが 今回の 朝ドラに出てる 
刑務所の中にいっしょにいる ええっと もう出て来ないというのは 老化ですむのかしら
あっ「イッセー尾形」だ!(漢字合ってますか?)
出て来たついでに 他の俳優さんも思い出しておかなくちゃ
安藤さくら 立った一人!ちょっと夫に聞いてきます。松坂慶子 やっと
お客さん あきらめてはいませんね
しかし 「こころ」は喜劇ではないでしょ 


《 2018.12.26 Wed  _  読書の時間 》