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おたより

スキャン2998.jpegふあさんからのおたよりのつづきです。

5月31日 ちいさなびん

このちいさなびんのおかげで、わたしはいっぱいなやむだろう。
なやむことはわるいことじゃない
なんて普段、えらそうにしているわたしは
しっかし このびんをまえにしてなやみ それからしばらくして びんから目を離し 昨日のつづきをしはじめるだろう。

そうそう、癌で死を間近にした人を見舞ったことがあります。
何を話せるのか、どんな顔してればいいのか、など迷いつつ結論が出ないまま病室を訪れました。
部屋に入ると彼は野球の実況中継のテレビを見ており、私をみると「やあ」と言い、もうじき諏訪中央病院のホスピタルへ入院できるんだなど話した。
死を目前にしていても人は昨日の続きをやってるもんだなと思ったものでした。
彼はちいさなびんに何をいれようかとは考えていなかったように思えます。

彼は そういうことについては いい加減に死んでいきました。
それでも彼の眼の前にも ちいさなびんはずっとあったのでしょう。

時間切れ

これから、友人たちが出演する演奏会、すずの音ホールへ行きます。

***

ふあさん これで 今回のおたよりはおしまいです。ありがとうございました。

癌で入院されているふあさんの友達の話は 私の友達のことにつながりました。
彼女も癌で 今はこの世にはいないんです。
幼稚園からの長きにわたる友達。彼女と何年かぶりに会う約束をして 電話をしてみたのでした。電話などこれがはじめてというくらい。
彼女は「いまふとんをほしているとこ」と言いました。そして松本駅まで迎えにいく だんどりなどを話したのでした。
たよりないわたしのかわりに 彼女がこちらに来てくれたのです。たった一日のそれも雨のふる日でしたが。
いつも 長い手紙で ご主人のこと 子どもたちのこと おたがいいっぱい書いてきてたんですが それは手紙のうえでの盛り上がりで 会うと ごく普通の 話なのでした。
病気の話も あまり しませんでした。 娘さんといっしょに ご馳走を食べました。
おみやげも かったりして。
ふあさんの言われるように 人は死が近づいていても 昨日の続きをやってるもんなんですね。

ちいさなびん たよりないかたちをしてますね。




《 2017.07.01 Sat  _  おたより 》