「ナマリの兵隊」 文 ハンス・アンデルセン
つづき
この踊り子も、気のかわらない、やさしいむすめでした。
ナマリの兵隊は、すっかり心をうたれて、ナマリのなみだを、ポロポロ、こぼしそうになりました。けれども、泣くなんて、兵隊らしくないと、おもいました。
ナマリの兵隊は、じっと踊り子を見つめ、踊り子のほうでも、ナマリの兵隊を見つめました。けれども、どっちも、ひとこともいいませんでした。
そのとき、一人の小さい男の子が、ナマリの兵隊をつかんで、ぽいと、ストーブのなかに
ほうりこみました。
どうして、そんなことをしたのか、べつに、わけはなかったのです。これも、きっと、かぎタバコの箱のなかの、あのわるい鬼のしわざだったのでしょう。
***
わたしもすっかり心をうたれました。