NEKO美術館 成瀬憲子

里帰したわたしの手紙　　NEKO美術館発

これは　子どもたちがまだ四人だった頃　わたしが美保関のしーちゃんに書いた手紙です。わたしたち一家と仲良くしていたしーちゃんは大阪の我が家にきては（兵庫県から）

二、三日まえまで　うつうつと気分がさえませんでした。赤ん坊に両手足をひっぱられた感じで　なにかをやろうとしても　抵抗しても　もうどうにもならないというところまできてしまう日があるのね。その上　体が弱っっていたりすると　無気力になってきて　うつうつとなってしまったの。

　しーちゃんもときとしてうつ　ちょっと原因は違うんだけどね。

うつのときは他人はいいかげんに助け上げようとしたりするのも　よくないときがあるんだってね。本人はおちるところまでおちて　「いたーっ！」となったところで、這い上がれることもあるんだってね。「もうあかん　もうあかん！」と思う人の方が立ち直れるリツが高いんだってね。

あーあ　なつかしいなぁ。アンアン　ノンノ　キラキラ　サラダ　からあげ　しーちゃんと難波の街を歩いたのも　うそみたい。

わたしは「またふられた」「またあかんかった」などといいながらね。

えらい落ち込んだ話やね。すんません。

ところで　いつも思うんだけど　しーちゃんの手紙そっちょくで　美保関の今の様子がよく出てていいね。何がよく出てるかというと　ええっと　つまり　しいちゃんがいるところとしーちゃん自身がね。その心境　洋服作る仕事を関西でがんばってたのに　急にかえることになって　海辺のふるさとで両親と一緒に住むということ　これ伝わってきて胸がキューンとするね。

おちるところまで　わーおちよー！

うちの犬　ミッキーはしっぽとおしりが皮膚病みたいになってハゲミッキーです。獣医さんの所に連れて行くつもりなんだけど　なんせ生後１０カ月の赤ん坊を一時間以上　隣の奥さんに預けるのが申し訳なくてね。だって自転車の荷台にミッキーをのせて　３０分あまりエッチラ　コッチラ　いかねばならぬのよ。

この犬　わたしのいうことよく聞いてくれるのよ。こどもたちとはちょっとちがうわ。ほんまこどものしつけはこうはいかんわねぇ。ミッキーかわいい！

　４人目で　子供は　はぁークタクタ。もうけっこうでございます。

しーちゃん　また話しにきてよ。遠いなぁ

＊

その後こどもは５人に。

数日前島根県の隣の鳥取県で大きな地震があったので　電話してみました。

被害はなかったようです。９４歳のおかあさんといっしょだから心配なことでしょう。

ちょっと安心したところで　これらの手紙の話になりました。

「あんたたちが　美保関にあそびにきた時代から　あんたたちのことはとまったまんま」

しーちゃんはそういいました。

わたしもそうです。