
Fさんからのおたよりです。
素晴らしい絵ですね。
こんなに少ない線でここまで描いてしまえるとは
この絵の中の老婆は頭の中で何をめぐらせているのかな
静かなこころではあるようですね。
***
Fさん 絵「子供になった母」を見てくださってありがとうございます。
1992年 母はよわって 入院しました。もうだめかもしれないというので 私は付き添いました。スケッチブックを持ってね。
ベッドに横たわる母は 子供がぐずるような ちいさな声で なにか寝言をいったりしていました。
それは小さな子供のようでした。
その後元気になって86歳まで生きました。
買い物に行って歩いてると 母によく似たおばあちゃんに 出合うことがあります。
それは 少女のように見えるときがあります。なぜかな ほっぺたのほんのりと赤い少女。たよりなげでね。
Fさんのお母さんは今で云う認知症になられたんですね。母はまだらぼけのときもありました。そのときはとっても明るくなるんです。そして元気がなくなると ふせて 子供のようになるのでした。そんなことをくりかえしながら いきました。
「わたしの母はすでに私をしっかりとは認知できなくなっています。ソファーに前屈みに坐り じっとして 何もみつめていないような茫洋とした目でテレビを眺めてすごしています。まるでテレビがそこから無くなっても視線は同じところにあるような感じです。自分が生きていることも忘れているかのようです。」
Fさんの書かれていることは 映像のようです。自分の母がそんなふうであっても 描いたかもしれません。無防備な母たちの瞳。
「どこから来た?
ー長野県からだよ
....
どこから来た?
ー長野県からだよ
....
の繰り返しです。」
すでに母を亡くしてから何年もたつ私は そんな光景は 映像なのです。
おかしいですか。あんなに逃げ出したかったくらいの出来事だったのに。