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おたより

これは『中島敦 父から子への南洋だより』川村湊編の中で見つけた 中島敦さんが息子の桓さんにあてた手紙です。


桓へ、
もう なつやすみ で いいね。こちら の
国民学校には なつやすみが ないよ。
一年ぢう なつ だから しかたがないね。
せたがや は どうだい? おも白いかい?
こちら には おとな の げんこつ ぐらい の
でんでん虫がいるぜ。 おりょうり して
人が たべるんだとさ。
わかもと と ハリバ を わすれないこと。
パラオには せみが いない。

***

桓さん この手紙をよんで どきどきしたでしょうね。「こちらの国民学校には なつやすみが ないよ」と聞けば 桓さんはどう思うのかな。 なつが一年中ある所ってどういうところなんだろうとかね。 大人のユーモアだとは気づかないでしょうね。
大人のげんこつぐらいの でんでん虫のこと 桓さんはきっと驚きながら想像してしまったかな。桓さんの手は子どもの手だったろうから それよりも大きいんだとね。 私もにぎりこぶしをつくりながら 想像しました。この近くの林の中でもでかいカタツムリを見つけましたけど あっ でんでん虫でしたねそれをはるかに上回るでんでん虫がいるなんてね! 食べるんだ 夢に見そうだな。
わかもと ふむふむありましたね あれ何の薬でしたっけ? ハリバは知らないなあ。これは敦さんが家からパラオに送ってほしいのかしら。おかしを家から送ってもらったりの手紙もありましたよ。 敦さんはおかしがすきなんですね。
で 最後に「パラオには せみがいない」と。まるでこの手紙は 詩のようですね。
大人はこどもに手紙を書くと たとえば かんたんな かなで書かなきゃならないから 詩のようになるんですかねえ。
「パラオにはせみがいないのか」私はつい云ってしまいました。

桓さんはこのお父さんの手紙おぼえてますか なんてこと聞いてみたくなりました。

おたよりおまちしてます 
《 2015.06.15 Mon  _  ちまたの芸術論 》